昨夜。帰路。窓につく雪をワイパーがかきわける音だけが空ろに響く車中の重苦しい沈黙。を破って、ハンドルを握った部長が、雨は夜更けすーぎにー雪へとかわるだーろー、って有名すぎるフレーズを口ずさみ、この歌を知っているか、と尋ねてきた。馬鹿にしているのか。間髪いれず答えようとした僕の「知っています」に、かぶせるように部長曰く、「これはオフコースの「さよなら」だ、出来る営業マンは歌を知っている」。疲れる。呆れる。言葉にできない。それから僕は、さよなら、さよなら、さよならーああーオーゥサイレンナーィ、ウェーホリーナーィ、著作権に抵触しない歌が生まれるさまを目撃した。嫌な予感が、した。 夜更けどころか夕方から、雪。客先から出るや否や、部長が「お前は雪道運転の経験が不足している。物心ついたときから雪道を走っている俺が代わりに運転してやる。今日は特別だ」といいはるので、らしくないけどまあいいか、眠いし、って