彼女は疲れていた。どうしてと訊くと、わかんない、とこたえた。はじめてがんばってべんきょうしたからかなあ。わかんない。とにかく疲れた。私たちは高校一年生で、夏休みを控えていた。 みんな中学とか小さいころから、なんかこう、すごい塾とか行って勉強するんでしょ、と彼女は続けた。机に頬をべったり載せている。休み時間と放課後はだいたいそのようにして話し、授業中はよく眠っていた。他の高校の知人から「槙野さんのところは放牧系なんだね」と言われたとおり、眠っている生徒を叱る教師はほとんどいなかった。私も彼女も「安くてうるさく言われない」という理由で高校を選んでいた。 みんななんで疲れないのかなあと彼女は言った。中学から進学塾とか想像を絶する。絶するねえと私はこたえた。なんでも世の中には選ばれし者たちの集う進学塾があり、同級生たちにはそうした塾の出身者のほうが多いのだそうだ。さらに「その手の塾を経由せずに入学
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