(絵:#104) 強い日差しは部屋に深い影を作った。 暗い室内に天井から降ってくる埃が、モニタの光に照らされている。 カーテンが半分開いた窓辺には、椎名まゆりが100円ショップで買ってきた観葉植物が並べてある。 部屋の住人二人は、買って来た次の日には、植物があったことを忘れていて、5・6個ある愛玩物たちは、全て枯れるか腐るかしていた。 葉のくさった匂いに、バナナの皮の匂い、唐揚げの香辛料と油の匂い。 カビの匂い。 まゆりがメイド喫茶に行く時につける香水の匂い。 便所の汚物入れからやってくる血の匂い。 そして精液の匂い。 それが、この部屋の匂いだった。 岡部倫太郎は18歳だった。 大学生ならば、入学式が終わり、大学生活に馴染もうと必死になる時期だ。 高校卒業者ならば、職場で右往左往している頃だ。 岡部倫太郎は中卒だった。 当人は高校中退と言い張っていたが。 小学校の頃彼は「神童」と呼ばれてい
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