Article Highlights 国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書において,日本政府は,福島第一原子力発電所事故は,東北地方太平洋沖地震が起こしたものはなく,地震がもたらした津波が発電所の冷却装置の電源喪失を引き起こし,その結果3機の原子炉のメルトダウンに至ったものだと述べている.1960年代に設計された福島第一原子力発電所の津波対策は,当時の科学データに照らして考えれば,妥当なものであったと辛うじて言えるかもしれない.しかし,1970年代から2011年の事故に至るまでの間に,大規模地震と,それが引き起こす津波の可能性について新しい知見が得られるようになった.ところが,こうした科学的知見を,事業者である東京電力も,規制当局も無視したのである.規制当局はIAEAのガイドラインに従って適切に津波対策を見直すことをせず,十分な対策を怠ったまま福島原発の稼動を許可し続けた.少なくとも