1.もう一つの「津波」東北・北関東地方の被災者の方には、心からお見舞い申し上げます。 さて、今回、われわれ日本人全員が、津波の恐ろしさを実感したわけだが、もうひとつ、警戒すべきことがある。それは、「市場の津波」である。 マイケル・サンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』(早川書房)の冒頭に、2004年夏メキシコ湾で発生したハリケーン・チャーリーが通過した後の便乗値上げのことが記されている。ガソリンスタンドでは、一袋2ドルの氷が10ドルで売られ、通常価格250ドル前後の家庭用発電機が2000ドルの値段を付けたそうだ。新聞は、「あらしの後でハゲタカがやってきた」という見出しを付けたという。 一方、東日本大震災後の日本では、水やガソリンなど、物資は不足したが、便乗値上げは報告されていない。それどころか、コンビニで買い物中に地震に遭遇し、店外に避難した人たちが、地震が収まった後で代金を支払