こんな話がございます。 伴山ト申す僧がございまして。 諸国を旅しておりましたが。 ある時、下総は須賀山ト申す地を、通りかかった時のことでございます。 四町ほど続く石垣が目に入ってまいりましたが。 そのほとんどが崩れかかっておりまして。 すみれ野原に、器のかけらが散らばっている。 どうやら、古い屋敷の跡らしく思われました。 その傍らに八十に近い老人が、火鉢にあたりながら藁靴を編んでおりました。 草の庵を結んで暮らしている様子でございます。 伴山が、上総への道筋を聞きがてら、 「ここはどちら様のお屋敷の跡でしょうかな」 ト、尋ねますト。 老人は、煙草の煙をくゆらせながら。 ゆっくりと語りだしたのでございます。 昔、ここは高塚沖之進ト申す武士の屋敷でございました。 高塚家は代々、この地の領主でございまして。 沖之進は隣国の姫君を奥方に迎え、つつがなく暮らしておりました。 その時、奥方はまだ二十一
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