編集者出身で、出版界の動向に詳しい評論家の野上暁さんは「新刊点数が増え過ぎた。既刊本が店頭に滞留する期間が圧倒的に短くなっている。出版社も書店も本来はスローなメディアだったはずの本の価値を忘れてしまって、ベストセラー至上主義に走っている」と指摘する。 新刊点数が増えて、総発行部数は頭打ち、つまり1点当たりの発行部数は減る一方。返本率の高止まりは、悪循環の象徴といっていい。 ある出版関係者は「出版各社による『平積み』の取り合いです。いい本悪い本ではなくて、スペースを確保するために点数を増やすような状況になっている」と明かす。もはや、本が店頭でホコリをかぶるヒマもない。 「着いたその日に返本というケースもあるようで、せっかく出版されたのに、誰にも知られずに消えていく本がいかに多いことか」 そう嘆くのは、東京・神保町で出版社を経営する朔北社の宮本功社長だ。現行の流通システムそのものの問題を指摘す