「声は届いています。はるか東の方から、何百万、何千万もの思いが、大きな塊になって聞こえてくるようです。遠かった道のりでした。本当に遠かった道のりでした。日本の、世界の舞台に初めて登場するその相手はアルゼンチン。世界が注目するカードです」(1998年6月14日、W杯フランス大会1次リーグ第1戦・日本対アルゼンチン) この声の主こそ、山本浩(NHKエクゼクティブアナウンサー・解説主幹)だ。 1998年、日本が初めてW杯に出場したフランス大会。その初戦はFWバティストゥータ、MFヴェロンらを擁する南米の強豪アルゼンチン。フランス南部の都市トゥールーズで行われたその記念すべき試合を中継したのはNHKだった。 60.5パーセントの視聴率を上げたこの試合をテレビ観戦した人は多かったのでは。そして、その試合とともに冒頭の実況が記憶に残っている人も少なくないはずだ。私も、TVの前でかじりついて見ていたこと