一日に一店のペースで町の本屋さんが消えているという。他方で、一日に200冊以上の新刊書が出ている。それらは大きな書店にしばらく並べられるが、売れなければ返品されて、二度と戻らない。早い出版ペースに押されて、新刊書も次から次へと消えていく。 本の読み手も減りつつある。図書館でひとり静かに本を読む、読んで考える、考えたことをノートに書きとめる、ページを戻って読み直すといった、本とつきあう時間は、まぎれもなく、読み手の心を鍛える。一冊の本を読むということは、読む前の自分とは違う自分に変身するということである。いい映画を観る前と観たあとではひとが変わるのと同じことだ。しかし、子供から大人までが手軽なおもちゃにうつつをぬかす時代に、本を読み、変身する時間を生きるのは稀なことになりつつある。 今回は、読書が変身の経験であると感じさせるような本を二冊紹介しよう。 まずは、 ドストエフスキー(1821~1