2009年10月に岩波書店から出した『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』の書評や著者インタビューは15本を超えました。 しかし、「字が多すぎて読むのがしんどい」「字が小さすぎて老人向きではない」「薬でぼやけたアタマでもわかるように書いてほしかった」……などの感想をいただきました。 そこで、『イタリア精神保健改革早わかり』をお届けすることにしました。 ◆ イタリア精神保健改革の立役者は、精神科医フランコ・バザーリアです。 パードヴァ大学の精神医学教室で教鞭をとっていた彼は、教授からゴリツィア県立マニコミオ(イタリア語で精神病院のこと)の院長になるよう勧められます。現象学とよばれる難しい哲学を精神医学に導入しようとする風変わりな気鋭学者は、古いアカデミズムになじめなくて、厄介払いされたのでしょう。37歳でした。 バザーリアは、マニコミオの正体を知りませんでした。バザーリアに限らず大学精神