良い刃物を使いこなせる人間になりたいと素直に思わせてくれる入門書アウトドアにおいて必携装備といわれるナイフは、実際のところ一般的な山登りに限れば常に使うわけでもない、ある意味脇役です。それでもフィールドで自分が納得する一本のナイフを器用に扱えるようになりたいという思いは、アウトドアをたしなむ人間ならば誰しもが多少なりともあるのではないでしょうか。沢登りに熱中していた学生時代、腰にぶら下げた鋭い剣鉈に意味もなく憧れていたのも良い思い出です。 ただ、人類が生きるために欠くことのできない道具として世界中で多様な進化を遂げてきた刃物は、その生半可な憧れで臨むには余りにも大きすぎる相手だというイメージがぼくにはどういうわけかずっと頭にあり、本気でその世界に飛び込むことをためらわせていたというのは事実です。とりあえず登山に使える手頃なナイフということであれば今や易々と手に入る一方で、自分にとってのかけ