十数年ネットで文章を書いてきて思うのだが、言葉というものはつくづく不完全な道具だ。内心の思いを伝えるために言葉以上の道具がないこともたしかだが、内心を正確かつ精密に伝達しようとするとき、言葉は時に哀しいほど無力である。 ネットのいわゆる「炎上」事件の過半は、その意見が問題であるからではなく、その意見を伝えるための言葉が不十分であったから起こるのだと思う。また、何かしら揉め事が起こったときも、実は意見の対立など存在せず、ただ言葉の解釈の問題だけがある、ということがしばしばである。 言葉、言葉、言葉。ただそれしか伝達手段がないネットでは言語能力は殊に重要だが、同時に、ただ言葉だけでひとに思いを伝えることはけっきょく不可能だというしかない。 いいや、とあなたはいうかもしれない。それはやり方しだいだろうと。十分に注意深く言葉を使えば、正しく意図を伝えることができるはずだと。 そうだろうか。たしかに