厚生労働省の有識者検討会で浮上した精神科病院の病棟を退院患者の居住施設に転換する構想に対して、反対の声が全国的に高まっている。7月1日に開かれる有識者検討会が結論をまとめるとしており、長期入院を体験した元患者も黙ってはいられない。 約23年に及ぶ入院を余儀なくされたさいたま市の辰村泰治さん(77)は「退院先が病院では、入院と同じ」と訴える。戦争に翻弄(ほんろう)された幼少時代と病院での半生を振り返り、「地域で、自分らしく暮らせる今が幸せ」と語った。 ■22歳で統合失調症発症 辰村さんは1937年、満州国(当時)に生まれた。8歳で終戦。建築会社に勤務していた父はシベリアに抑留され、旧ソ連の陸軍病院で亡くなった。 母と2人の弟、お手伝いさんと身を寄せ合うようにして引き揚げ、北陸の母の実家に身を寄せた。間もなくすぐ下の弟が6歳で亡くなる。「弟は、死の床で『とうちゃん返せ』『とうちゃん返せ』と泣き