連載の最後にあたる今回は、経済学とは少し離れた話題を書いてみたい。20年ほど前、研究室の留守録に女性からのメッセージが残されていた。いわく、貴方は戸籍名と通称を同時に使っているようだ。私は、結婚前の姓を使い続けたいと裁判を起こしているが、証言台に立ってくれないかと。大変申し訳なかったが、当時は多忙で、お返事をしなかった。 私は、生まれたときの姓は奥野だったが、母方の祖父の養子になって戸籍名が藤原になった。ただ、養子になったのが29歳の時で、米国在住で、すでに何本か国際誌に旧姓で論文を発表していたため、深く考えずに、英文論文を書く際のペンネームとして奥野姓を使い続けた。30歳になってある国立大学に採用され日本に帰国した結果、大学内では戸籍名を使わざるを得なくなり、パスポートの名前も藤原に変わった。 この直後に私は、イスラエルの友人に招待されてテルアビブ大学を短期訪問した。もちろん上記のような