本稿冒頭で述べたように計算言語学は形式性を重視する言語学の一分野であるが、計算言語学と隣接分野、特に自然言語処理、の境界線は曖昧である。計算言語学と自然言語処理の差異については、専門家から次のような指摘がなされている。 言語に関する情報科学的な研究の目的は,人間の言語処理過程の科学的な究明や,ワープロや機械翻訳などの工学的な応用を含み,きわめて多岐にわたる。 …中略…「自然言語処理」はどちらかというと工学的な応用を指向した言い方であり,「計算言語学」にはもう少し基礎的・理論的なニュアンスがある — 松本ほか[2000:p.80] 計算言語学は他に自然言語処理、理論言語学、数理論理学からなる数理言語学の一分野とされる[3]場合もあるが、ここでも理学系の「計算言語学」、工学系の「自然言語処理」と位置付けられている。 一方で、計算言語学と自然言語処理が同義で用いられることもしばしばある。実際、こ