ダーウィンの従兄弟、フランシス・ゴルトン(Sir Francis Galton、1822〜1911)は、人類学者で心理学者、統計学者にして遺伝学者、探検家という多種多様な才能を発揮するとともに、優生学を唱えた最初の人物としても有名だ。19世紀という時代を考えれば、彼の業績と足跡は毀誉褒貶相半ばするという評価ではすまされないかもしれない。 我々は衆知を集める衆愚か そのゴルトンは1907年、英国の科学雑誌『nature』に「Vox Populi(群衆の知恵)」という有名な論考(※1)を載せている。彼が英国のプリマスで開かれたウシの競り市へ行ったときの体験だ。 最重量と目されたウシの体重をカードに記入して当てっこするイベントがその競り市で行われ、酪農家や精肉業者などのウシの目利き以外にも何人かの市民が6ペニーずつ出し合ってクイズに参加した。 イベント後、ゴルトンは主催者から787枚のカードをも