2008年の北京五輪。男子100m競走決勝での彼の速さは、我々の理解が追いつかないほどだった。左足の靴ひもがほどけたのを気にもかけずに圧勝し、9秒69の世界新記録を叩き出した(その記録もボルト自身が2009年に9秒58で更新した)。そればかりか、残り20mのところで他選手を圧倒、最後の数歩を両手を広げ流して走り、フィニッシュの際も胸を手で叩くほどの余裕を見せて打ち出した記録だった。その走りは、あきらかに人類のレベルを超えていた。ボルトの身体は何らかの未知の素材でできている──そう考えてしまうほどの速さだった。
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