6つの顔をもつ男 筆者はロシアのインターネット書店からプーチンに関する新刊書をかなり買い揃えているが、有益な情報はほとんどない。 実を言うと、ロシア語で書かれたプーチンの評伝は、新しくなればなるほど、内容がスカスカになっている。プーチンが皇帝化するにつれて、ロシア人の自己検閲が強まっているからだ。 米国人の書いた『プーチンの世界』(フィオナ・ヒルとクリフォード・ガディの共著)は、現在、日本語で読むことができるプーチンの評伝でもっともレベルが高い。 ソ連時代はKGB(国家保安委員会)で対外インテリジェンスを担当していた中堅職員(退役時の階級は中佐)が、1996年にモスクワで大統領府に勤務するようになってから急速に出世の階段を上り、ロシア初代大統領のエリツィンにより後継者に指名され、その後、磐石な権力基盤を構築し、専制君主のような地位を得た過程を詳細に調べ、わかりやすく記述している。 もっとも