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  • 帝國銀行、人事部64 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    田嶋は副部長の伊東から個室の会議室に呼ばれていた。 時刻は20時30分。そろそろ帰りたい時間だったが、急に呼ばれたのだった。今日は自宅でご飯をべると伝えたので、が何かしらの準備をしてくれているはずだ。もし、べられなくなってしまったら申し訳ない。 田嶋の思いなど知らず、会議室に入るや否や、伊東が話し始める。 「中野坂上の岩井君のことは大変だったな」 「はい。怪文書の件も含めて、皆様にご迷惑とご心配をお掛けしました。伊東さんにも諸々ご指導頂きました。何も無いとはいえ、火のない所に煙は立たないと言われかねません。今以上に身を引き締め、業務に邁進します」 「君は相変わらず固いね」笑いながら伊東が言う。しかし、目だけは笑っていない。伊東の顔には笑い皺が刻まれている。少し表情を動かすだけで笑っているような表情が作られる。話し方も穏やかで、一見すると理解のある素晴らしい上司と見えるだろう。 「私達

    帝國銀行、人事部64 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり
    hachikulo
    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部63 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    「他に質問はあるか。何でも良いぞ。伊東君が珍しく興奮しているようだが、それだけの問題なんだ」山中がハリのある太い声で話しながら、周囲を見渡す。田嶋と目が合った。何か聞け、と山中が促しているようだった。田嶋と山中は比較的仲が良い。旧行は異なるが、波長が合うのだ。田嶋が挙手する。 「質問させて頂きます。今後のスケジュールはどのようになっているのでしょうか。一般職の廃止と店舗閉鎖の行内発表の時期は重なるのでしょうか。また、店舗閉鎖についてはお客様へご不便をおかけすることもありますので対外公表の時期も重要かと思います。ご教示頂けましたら幸いです」田嶋は出来るだけ当たり障りの無い質問をした。 「うむ。一般職の廃止という人事制度変更と可能な限り同時に店舗閉鎖の全体感は行内で発表する。但し、具体的な閉鎖対象店舗についてはまだ固まっていない。決まった店舗から順次発表していくことになる。特に地方店舗閉鎖の場

    帝國銀行、人事部63 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり
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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部62 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    田嶋の視界の隅で手が上がった。あれは、四国担当の橋だ。 「すみません。質問宜しいでしょうか」 「どうぞ」伊東が短く答える。 「廃店される店舗の総合職は異動させてしまえば良いので問題はないのですが、総合職が少なくほとんど一般職だけで運営している店舗もあります。一般職の処遇はどのようにするおつもりでしょうか。また契約社員もいますが、こちらはどのように対応するのですか」橋はつらそうに言葉を絞り出した。 「一般論として聞いて下さい。個別の店舗毎に事情は異なるので。原則としては、所属店が廃店となり近隣に通勤可能な店舗がない一般職には、首都圏もしくは関西圏への転勤のオプションを提示します。その場合は社宅もしくは寮を当行負担で提供します。すなわち、働き続けたい行員には、職を保証するということです。しかし、家庭の事情で遠隔地への転勤が叶わない行員もいるでしょう。その方については、親密な地方銀行さんに雇

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部61 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    『入社して配属されないと、どのような仕事が出来るか分からないこと』『自分の意思に関係なく違う職種に異動させられたり、転居を伴う異動をさせられること』は時代遅れと言われてきた。学生は就職時にこの観点で企業を選ぶことも多いだろう。このような働き方は、今の時代の社会人の生き方に合わなくなってきているとされている。だから、総合職とか一般職という職種を残している企業はダメだとされる論調もあるが、これには田嶋は違和感を覚えてきた。店舗や事務所は全国に点在し、大量の事務処理への対応も必要という観点で現実に合わないからだ。 しかし、RPAの登場はこの現実を変える力を秘めている。日で長らく続いてきた総合職と一般職という職種を無くす動きをRPAが果たすかもしれない。 田嶋は驚きながらも、自分がRPAの登場とそれに続く一般職の廃止まで見通せなかった人事担当としての自身の知見の浅さを残念に思った。 その中で山中

    帝國銀行、人事部61 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり
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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部60 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    一般職を無くした他の銀行も結局は何らかの形で一般職を復活させている。理由は、大量の事務だ。例えば、転居を伴う異動がある総合職と転居を伴わない総合職の2職種に人事制度を整理したとしても、実質的には転居を伴わない総合職がいわゆる一般職的な業務を行うことになってきたのが他行の実例だ。事務は誰かがやらねばならない仕事なのだ。 銀行はマニュアル文化であり、定型的な事務作業が大量に存在する。この業務はマニュアルに基づくだけあって、前例踏襲の業務が多く、当の意味での創造性や新たな判断は必要とされない。間違いさえなければ良いので総合職が行わなくても良いとされてきた業務だ。転勤のない総合職は一つの営業店や部署への在籍が長くなることが多く、そうすると前例踏襲の業務における「前例」に精通することになる。そのため、自然なのか、管理職の意図的なのかは置いておいて、実質的に一般職の業務を行うことになるのだ。 『しか

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部59 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    総合職という職種が生まれた背景は、一言で言えば高度成長時代という時代にある。企業が規模も事業も急激に拡大させていく時代であり、新しい営業店、事業所、部署が次々と生まれていった。その企業の拡大に合わせて柔軟に従業員を移し、配置する必要があった。日では就職と言うが、実際には「就社」であることが今でも一般的だ。この就業感覚は高度成長時代の働き方が影響している。『自分はこの仕事をしたい』という人よりも『会社の言う通り何処へでも、何でもやる』という人が貴重な人材として扱われてきた。会社は、仕事内容や勤務場所について文句を言わせない代わりに、従業員に相応の処遇、特に終身雇用を提供してきたのだ。そのため、特に新卒者は、仕事内容ではなく、会社名で就職先を選んできた。そして入社してからは、会社への忠誠心を求められた。その最たる例が銀行と言えるだろう。これが総合職の生まれた背景だ。 一方で、企業の根幹として

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部58 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    田嶋のみならず、他の人事部メンバーも息をのんでいた。とうとうここまで来たのだ。田嶋の世代は銀行が倒産する時代を知っている。不良債権処理で厳しい環境を過ごしてきた。しかし、若い世代は銀行が潰れるとは思っていないだろう。何と言っても就職人気ランキングの上位を維持してきた業種なのだ。 田嶋は聞きながら背筋が寒くなっていた。銀行にとって一般職の廃止は鬼門だ。今までも何度か「一般職の高度化」や「一般職の総合職化」が叫ばれ、人事制度を変えたり、給与制度を変えたりと様々な手を打ってきた。しかし、既存の中高年層からの反発と、金融庁の指導により大幅に増加したコンプライアンスに関する事務量の前に効果を上げられたとは言えない。 銀行における一般職と総合職を理解するには、まず総合職を理解し、その対比として一般職を考えてみると分かりやすい。 総合職とは「企業において総合的な業務に取り組む職」と定義される。これだけだ

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部57 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    ここまで一気に山中は説明した。原稿は見ていない。気だ。会議室の雰囲気が急激に変わる。山中の声以外に一切音がしない。山中の発言が止まった瞬間に耳が痛くなるほどの沈黙が会議室を包んだ。 「分かるか。私は気だ。そして頭取含め役員は気になった。我々は銀行を変えるんだ」山中が執行役員人事部長として檄を飛ばす。 「では、まず皆へ大事な方針を伝える。当行は一般職を総合職と統合し、職種を一化する。支店では顧客への提案営業やコンサルティング業務が増え、一般職も働きが総合職に近づいている。来年4月をめどに従業員組合へ申し入れ、労使協議を経て来年10月には職種一化への移行をめざす。職種の垣根をなくすんだ。やる気がある行員には幅広く活躍できる環境を提供する。逆にやる気の無い行員にはツライ目にあってもらう。変われなければ当行を去ってもらう人も出てくるだろう。それでもこの改革はやり切る。当行が生き残るためだ

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部56 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    田嶋がそのように考えていると、すぐに山中部長が話を始めた。 「お疲れさんです」山中は人事部長ではあるが、いわゆる官僚的な人物ではない。国内の法人営業畑で、幅広い人脈とシンパを持つ。身体は大きく、首は無い。いわゆるアメフト体型だ。自身は大学4年間でアメフトしかやっていないと豪語している。目は一重で細く強面だが、笑うと八重歯が出て愛嬌があった。人事部の女性陣からは「カワイイ」と言われており、人もそれに気付いている。影のあだ名は「やまぽん」だ。 山中が話を続ける。 「期初のお忙しい中、皆さんにこのように集まってもらったのは、当行の今後を左右する人事施策をこれから実行していくことを伝えたいからだ。しっかりと人事部一丸となって、スクラムを組んで実行してもらいたい」 田嶋はスクラムはラグビーじゃないかと場違いな感想を持った。もちろん顔にそんなことは出さない。田嶋は前から4列目の席であり、端の方だった

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部55 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    10月上旬、下期の戦略会議が帝國銀行人事部の管理職を集めて行われた。単独の部であるにもかかわらず、合計すると100名は下らない。 9時から開始だった。10年前の人事部ならば8時や19時スタートというのもあり得た。しかし、今は人事部が率先して働き方改革を行わなければならない時代だ。外の部署からの見え方もあるため、会議は業務時間中に開催されるようになった。 100名規模の会議では、人事部のフロアにある会議室を使う訳にいかない。秘密主義の人事部といえども、他の部署も利用する会議室を使用していた。 最初に司会進行役の伊東副部長が日の流れを説明する。 席の配置はスクール形式だ。前の席には、山中執行役員人事部長、そして伊東副部長の2名のみが座っている。両名の後ろには大きなスクリーンがあり、プロジェクターから映像が投影されていた。 スクリーンにはパワーポイントで作成された資料が映っており、愛想の無いタ

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部54 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    山内が泣いたような目で田嶋を見つめる。 「田嶋君の手を私が握った写真を撮ったのは岩井支店長なの」 ふいに田嶋は現実の世界に引き戻されたような衝撃を受けた。 「え?」 「そう。私は裏切り者なの」 「山内さんは何を言っているの」 「聞いて。岩井支店長から頼まれていたの。田嶋君を追い落とすようなネタを作ったら、営業から事務に係替えするって」 「それって」 「そう。私も40歳を過ぎて、渉外担当として営業するのはつらいの。銀行の営業に終わりなんてない。毎年、業績はリセットされて、目標という数字に追いまくられるだけ。もう疲れたの。だから事務に変わりたかった。もちろん、私は岩井支店長が嫌いよ。生理的にも受け付けない。若い男に媚びを売って、でも銀行内では出世間違いなしと言われて。私とは何もかも違う。だけど、あの人には人事権はある」 「だから」 「そう。だから岩井支店長を飛ばしたいと動きながら、岩井支店長が

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部53 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    翌日、岩井の人事異動が発表された。銀行の人事異動では理由は明かされない。その後、しばらくしてから岩井はパワハラで飛ばされたとの噂が流れた。それだけだ。尚、中野坂上支店から仙台支店に異動した稲垣は、しばらくしてから真島と結婚した。真島はその直前に帝國銀行を退職していた。 田嶋は一連の動きが終わった後に山内に会いに行った。 「色々あったし、人事部の動きについては現場の皆さんには言えないことが多い。でも一応一件落着だよ。協力してくれてありがとう」そう言いながら田嶋は山内に途中で買ってきたお菓子を渡した。大丸東京店で買ったピエール・エルメのマカロンの詰め合わせだ。6個しか入っていないのに税込2,808円。すなわち、1個当たり468円。マカロンたった1個が、帝國銀行店の堂利用時の昼代を超える。田嶋のお気に入りのお菓子は昔から森永のハイチュウ・グリーンアップル味だが、通常は108円程度だ。ハイチ

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部52 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    出勤すると伊東がすぐに会議室に来るように指示を出してきた。机からノートだけを取り出して、伊東の後を追う。いつもの殺風景な会議室に山中がいた。伊東が自然な形で山中の横に座る。田嶋は山中の目の前にテーブルを挟んで座った。今日の山中のネクタイはいつもよりも明るいオレンジに近い赤だった。 「中野坂上支店の岩井君の件なんだがね。この度、関西の事務センターに異動してもらうことになった。君が入手した不倫の証拠写真が決定打だ」 山中は真面目な表情だったが、口調は少しラフだった。いつもの冗談が多い山中の雰囲気だ。 「完璧に、ホテルと、銀行の業務用車、そして腕を組みながらホテルに入っていく岩井君と部下が写っていたね。しかもデータは業務時間中であることも示していた。完璧にアウトだ」苦笑いしながら山中は伊東を見た。伊東は肩をすくめただけだった。 「岩井君は降格の上、関西へ単身赴任。相手の男性部下は仙台へ転勤だ。こ

    帝國銀行、人事部52 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり
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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部51 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    その後、山中からの音沙汰はしばらくなかった。 伊東も田嶋には何一つ話をしてこない。田嶋は焦燥感に駆られながら、業務を行うしかなかった。夕方になると暇になってしまうため、調べたかった様々な情報をネットで収集している。例えば、世の中の企業において変形労働時間制を採用している企業の割合や、テレワークを導入している企業数の割合は政府の統計で調査されているはずだった。 帝國銀行では現時点で導入されていないが、導入を検討すべき施策の一つが勤務間インターバル制度だ。 日では、以前から問題になっている長時間労働の是正や各労働者の健康確保などの観点から、労働時間等設定改善法という法律の中に「始業から就業までの間に一定の間隔を置く」という努力義務規定の法律が制定されている。これを完全に制度化したのが勤務間インターバル制度だ。欧州では古くから導入されていて、終業から始業まで11時間を開けるというのがEUの決ま

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部50 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    翌日、田嶋は6時にオフィスに入った。いつも通り山中は6時20分頃来るはずだ。既にセブンーイレブンで必要な書類は印刷してきてある。田嶋の自宅にはプリンターがない。代わりにセブンーイレブンのアプリを使っている。このアプリはアプリ内に印刷したい書類をアップロードしておけば、全国のどのセブンーイレブンでも書類の印刷が出来るものだ。仕事関係であれば自身のスマホや自宅のパソコンから銀行の業務用メールにデータで送ることを認めてほしいところだが、帝國銀行では情報管理の観点もあり、外部から私用メールを自身の業務用メールアドレスに送ることを禁止していた。システム部が各人の業務用メールを監視ソフトを使って監視しているのは公然の秘密だ。恐らく、すぐに禁止行為をしたら呼び出されるだろう。 山中がオフィスに現れた瞬間に田嶋は反射的に立ち上り、自然な風を装いながら山中の席にゆっくりと歩き出した。山中が自席に付いた瞬間に

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部49 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    翌日、田嶋は人事部に異動してきてから一番早く退行した。18時30分にオフィスを出たのは初めてだ。昨日の怪文書が気になり、どうしても仕事に身が入らなかったのだ。 田嶋は、浅草にある行きつけのバーに足を向けた。 神谷バーは、1880年に創業した日で最初のバーだ。浅草寺の雷門から東に1ブロック歩いたところにあり、隅田川がすぐそばにある。 神谷バーの名物は、デンキブランというブランデーをベースとしたカクテルだ。電気がめずらしい明治の頃、目新しいものというと『電気〇〇〇』などと呼ばれ、舶来のハイカラ品と人々の関心を集めていたそうだ。デンキブランは強いお酒で、当時はアルコール45度だった。これが『電気』とイメージが被り、デンキブランは有名になった。 デンキブランのブランはカクテルのベースになっているブランデーのブランを表している。そのほかジン、ワイン、キュラソー、薬草などがブレンドされているが、その

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部48 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    「証拠はありませんが、中野坂上支店の岩井支店長と少々問題を抱えております」 「山中部長からも、簡単な経緯は聞きました。では、岩井さんがやったということですかね」 「私には分かりません。しかし、今回の岩井支店長への対応の端緒は山内さんからの連絡です」 「そうですか。この文書が事実ではないことを、田嶋さんのために祈ります。しばらくは中野坂上支店には関わらないようにしてください」 「しかし、現状で問題が起きています」 「対処は山中部長がなされます。田嶋さんが動かなければならない事象が他に発生した場合には、代わりに私が対応します」 「それでも」田嶋がい下がると、伊東が苛立ちを隠しきれずに声を張り上げた。 「あなたは山内さんと何も無いと言っていますが、問題があった時に責任を問われるのは私です。田嶋さんは信じられる人かもしれない。でも、なぜあなたのために私がリスクを取らなければならないのですか」 驚

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部47 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    山中に相談して二日が過ぎたころ、人事部宛に差出人不明の書面が届いた。宛先は山中人事部長殿となっていた。 午後一番に田嶋は副部長の伊東から会議室に呼ばれた。入室するなり、伊東が話し始める。 「田嶋さん。困ったことになりましたよ。」 そう言って、書面のコピーを田嶋に見せた。 『御行の人事部に所属する田嶋は、同期である中野坂上支店の山内と不倫関係にある』 書面にはそのように書いてあった。 田嶋は最初、この文面の内容が頭に入ってこなかった。理解出来なかったのだ。 しばらくして意味を理解した田嶋は伊東に聞いた。 「これは何でしょうか」 「それを聞きたいのはこちらです。まず事実確認しましょう。後で嘘を言っていたことが分かったら厳しく対処しますからね。田嶋さんと山内さんは、この書面にあるような関係ですか」伊東の目がメガネの奥で光ったように感じた。鷹が獲物を狙う目というのは、このようなものなのだろうか。

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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部46 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    「田嶋君。岩井支店長の件はどうなっているの」そう尋ねた山内の目は真剣だった。 「このままだと、中野坂上支店は崩壊しちゃうよ。スタッフさんたちは次々と辞めたいって言うし、真島さんは今日も病欠。もしかしたら、病院でになったと診断書を書いてもらっているんじゃないかって皆が心配しているよ。ここ数日は話の内容がおかしかったもん」 田嶋は突然の話題転換に驚きながらも、冷静を装って口を開く 「岩井さんの件は任せておいてくれ。必ず、中野坂上支店を働くことが出来るお店に戻すから」 「そうなの?」 「ああ。今、人事部として対応している。銀行は人が全てだ。信じてくれて良い」 「分かった。それで、ちょっとLINEの登録ができるQRコードを開いてくれない?」 「え? 何で」 「いいから」そう言いながら、山内は田嶋の手をつかんで田嶋のスマホを取り上げた。田嶋は急に山内に手を握られたようになり固まってしまった。山内は

    帝國銀行、人事部46 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり
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    hachikulo 2021/03/28
  • 帝國銀行、人事部45 - 事実はケイザイ小説よりも奇なり

    「部長。岩井支店長は暴走しかけています。これは私の行動が裏目に出たものです。私へのお叱りはあるかと思いますが、まずは中野坂上支店への対処です。私としては岩井支店長の異動を諮って頂きたいと考えています。もちろん、部長から一旦は注意をして頂くという方法もあるかと思いますが、支店メンバーとの信頼関係が完全に毀損してしまっています。銀行は人が全てです。岩井支店長を異動させるべきです」 山中は田嶋の説明中、スマホをいじりながら聞いていた。山中が悩んでいる時の癖だ。1分は沈黙が流れただろうか。山中が顔を上げた。 「分かった。リテール部門の常務とまずは相談する。山内さんのメールだけではなく、他の支店メンバーからの裏を取って明日の17時までにA4一枚の資料に纏めておいてくれ」 そう言って、山中は会議室を退出した。 岩井の異動については、山中が役員と相談したようだったが、田嶋にはそのフィードバックはなかった

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    hachikulo 2021/03/28