「死がこんなに温かいことを、初めて学ばせていただきました」 看取り士として、ある高齢男性の最期を見届けた女性看護師はそう言い、目を潤ませた。 昨年9月に出版した拙著『抱きしめて看取る理由』取材の一場面。亡くなって2時間以上過ぎてから触れた男性の背中の体温と、男性に「死んでも愛していますよ」と呼びかけて抱きしめた認知症の妻。「死の温かさ」とはそれらを言い含んでいた。また、看護師として触れてきた手脚の冷たい遺体のことも、彼女の前提にあった。 「温かい死」を家族とつくることを目指す団体がある。一般社団法人「日本看取り士会」(本部、岡山市)だ。同団体は、余命告知を受けた人の家族からの依頼で看取り士を派遣する。本人の死への恐怖や、家族の不安をやわらげながら、医師とも連携し、納棺まで寄り添う仕事。看取り士は、家族に抱きしめて看取り、命のエネルギーを受けとるようにうながす。 この連載では、看取り士と家族