プロローグ それは、雨降る朝、我々がお茶の時間を楽しんでいるときだった…。 通りに馬車の止まる音が聞こえ、まもなくドアの呼び鈴が訪問者のいることを告げた…。 訪問者はクレイの弟と名乗ると、兄の経営する画廊で肖像画が盗まれたので探して欲しいと依頼をしてきた。 私が「絵のこと」「画廊のこと」「エバンスのこと」について訊くと彼は去っていった。 彼の兄が経営するクレイズ・ギャラリーでニール・エバンスの「赤い帽子の少女」と題する肖像画が盗まれたらしい。私は部屋にある「ステッキ」「銃」「バイオリン」と暖炉の中に置いておいた「パイプ」と右の引き出しにしまっておいた「笛」を持って、助手のワトスンと一緒にクレイズ・ギャラリー(B-5)を向かうことにした。 クレイズ・ギャラリーの場所は手持ちの赤いアドレス帳で簡単に調べることが出来た。