昨年7月に北朝鮮を脱出、中国の朝鮮族農民の妻となった女性=西村写す 深刻な食糧難をはじめとする経済・社会の混乱が続く北朝鮮から、中国へと逃れてくる女性たちがいる。国境警備の目を盗み、命がけの思いで国境の川を渡ってきた彼女らは、売買の対象になっているという。北朝鮮国境に近い中国吉林省のある農村を訪ねた。 「私は6千元(約7万8千円)で妻を買いました」 農業を営む朝鮮族の40代の男性がぽつりと語った。 「夫はよくしてくれます。毎日腹いっぱいお米が食べられて幸せです」 横に座っていた30代の女性がうつむいたまま話した。国境を越えてやって来た、いわゆる脱北者だ。 北朝鮮のある町に住んでいたこの女性は、父母を亡くして独りで農業をしていた。肉や魚はおろか、米さえめったにありつけない。トウモロコシの粉と白菜を煮たものを食べ、時にはトウモロコシの芯まで食べた。収穫物を国に納める農地のほか自家用