太陽のような超高温、超高圧の環境で起きる水素の核融合を、試験管の中で実現するという「常温核融合(Cold Fusion=CF)」に研究者人生を捧げ続けている科学者がいる。元・北海道大学大学院工学研究科助教の水野忠彦・工学博士(63)だ。登場時に、夢のエネルギーともてはやされた常温核融合だが、実現不能あるいは疑似科学、オカルトと言う批判も付きまとい、評価が割れている。そのCFを約20年追い続け、3月に北大を定年退職した水野氏の半生と、その研究を追った。(寄稿:ジャーナリスト・田中徹) ■教授職より大事だった常温核融合研究 計器類を前に研究生活を振り返る水野氏JR札幌駅の北口を出て、ホテルやオフィスビルの並ぶ通りを徒歩10分ほど。銀杏並木が続く北海道大学の北13条門を抜けると、ほぼ正面に工学研究科の建物がある。真新しいエントランスを入り、増改築を繰り返した建物を右へ左へ進んで2階に上がると、水