しばらく前に家を出たっきり、姿を見ていない――。所在の分からない高齢者をめぐっては、家族からもひとごとのような言葉が漏れる。捜索願すら出されなかったケースが少なくないのは、なぜなのか。娘や息子でさえ連絡先を知らないことの背景には、複雑な事情が絡み合う。 ◇ 「都内の最高齢者はウチにいる。家に行って確認してみようか」 7月30日、東京都杉並区の高齢者施策課の職員2人は、113歳の古谷ふささんの“自宅”を訪ねた。 古谷さんのアパートは、区役所からわずか500メートル。初めて訪れた職員に、古谷さんと同居していることになっている長女(79)は告げた。「母はここに住んでいない」 かつては千葉県で母、弟の3人で住んでいた。が、「借金か何かで家を売り、住むところがなくなった」。最後に会ったのは1986年ごろ。 では、どこにいるのか。 長女が「一緒にいるはず」と指摘した次男(71)は