「絶対に緩まないナットがある」。昨年8月、こんなうわさを耳にしたボブスレー日本代表チームの石井和男監督は大阪府東大阪市のねじメーカー「ハードロック工業」に電話を入れた。競技に使うそりのシャーシ部分と、氷面と接する4枚のランナーと呼ばれる部分をつなぐボルトの固定に、同社の「ハードロックナット」が使えないか、という依頼だった。 [フォト]日本、ボブスレー2人乗りで男女が出場枠獲得 選手の強化とともにそりの改良を重ねていた石井監督を悩ませていたのはナットの緩み。ランナーはガチッと固定せず1〜2ミリ程度左右上下に動くように装着される。この「遊び」がコース上の細かい凸凹で生じる衝撃を吸収、ランナーと氷面を密着させて速さを生み出す。 ところが遊びがあることで、ナットは激しい衝撃にさらされるため約1分の滑走の間でも緩んでしまう。遊びの幅が大きくなり過ぎると、そりの進行方向がぶれてスピードをロスする