空砲を撃つような現実 問題になっている殺人事件の12週間前、ジョン・マカフィーは、スミス&ウェッソン製のリヴォルヴァーのシリンダーを開くと、わたしと彼を隔てるテーブルにバラバラと弾を落としてみせた。弾のうちいくつかは床に落ちた。マカフィーは66歳。やせ形だが筋肉質で、ひじから手首にかけて血管が浮き出ている。髪はまだらに脱色され、肩から腕までタトゥーを入れている。 彼が25年以上前に創設したウイルス対策ソフトウェアメーカー、マカフィー・アソシエイツは、次第に人気を獲得していき、2010年には76億8,000万ドルでインテルに買収された。マカフィーはいま、ベリーズ本島から24km離れたところに所有する島のバンガローでひっそりと暮らしている。窓には日よけが下ろされており、わたしのところからは外に広がる白い砂浜もターコイズブルーの海も断片的にしか見えない。テーブルには弾薬の箱、マカフィーの写真入り