3月にもなると、いつもの町が華やいだ雰囲気に包まれる気がいたします。それは以前より一段と暖かくなった日差しと共に、いたる所で飾られるお雛さまを目にするからでしょうか。そんな春の訪れを告げるお雛さまのなかに、県内でもちょっと珍しい素朴な味わいが魅力の「土びな」と呼ばれる土人形があります。この土人形が作られているのは県北部の中野市で、毎年3月31日〜4月1日には「中野土びな市」が開かれ、県内外から訪れる大勢の土びなファンで賑わうのです。 庶民に愛され続けてきた土人形 土人形は、その土地に暮らす人々の信仰や風習などと深く結びつき、庶民に愛されてきました。江戸時代後期には全国に150箇所もの産地があったようです。なかでも京都・伏見稲荷大社参詣のお土産として作られてきた伏見人形は日本最古で、日本各地の土人形の原型ともいわれています。 その伏見人形はここ中野市において「中野人形」として奈良家が流れを