「バラッド第一番」の続き。 傷口のある頭で かんがえる。 われ思う、 故にわれあり。 いやさ われなきところで われ思う、 故に われ思わぬところに われあり。 祝うべき いわれはない。 いまここに あることだって、 はげしい 冗談。 (「バラッド第一番」『長田弘全詩集』) 《われなきところで/われ思う、/故に/われ思わぬところに/われあり。》の5行について、晶文社版オリジナルには、注釈がついている。いわく《ラカンの定義。坂部恵『仮面の解釈学』による》。オーケー。『仮面の解釈学』には2009年に出た新装版があるが、僕の手元にあるのは1976年版で、長田もここから引いたものと思われる。では坂部恵の本から、該当箇所を探そう。1976年版だと184頁。第4部「しるし・うつし身・ことだま」の第1章「しるし」。 こうして、しるしの出現は、主体の不在あるいは死においておこなわれる。「われなきところでわ
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