(1)「絶対的な真理」というものは存在しない。神のような超越性の視点を括弧に入れてしまうと、われわれが「真理」とか「客観」と呼んでいるものは、万人が同じものとして認識=了解するもののことである。人間の認識は、共通認識の成立しえない領域を構造的に含んでおり、そのため、「絶対的な真理」「絶対的な客観」は成立しない。 (2)しかし逆に、われわれが「客観」や「真理」と呼ぶものはまったくの無根拠であるとはいえない。そのような領域、つまり共通認識、共通了解の成立する領域が必ず存在し、そこでは科学、学問的知、精密な学といったものが成り立つ可能性が原理的に存在する。ニーチェやヴィトゲンシュタインを含めて、相対主義や懐疑主義的な思考の系譜は、総じてこの領域について適切な解明を行うことができない。 (3)共通了解が成立しない領域は、大きくは宗教的世界像、価値観に基礎づけられた世界観(その特殊性を強引に普遍化し