英国の童謡『マザーグース』の中に次のような詩がある。 釘が一本抜け落ちれば鉄沓(かなぐつ)が脱げ 鉄沓が一つ脱げれば馬が負け 馬を一頭失えば騎兵が負け 騎兵を一人失えば戦争に負け 戦争に負ければ王国は滅亡する 一切は鉄沓の釘一本の脱落から起る (石川澄子訳、鳥影社) これは、日本でいえば「風が吹けばおけ屋が儲かる」という論理の飛躍を揶揄したものだ。これを今の日本に当てはめれば、さしずめ「電力がなければ自動車部品工場が止まる」となるだろう。 東日本大震災以前から、今後10年の日本の成長見通しは暗かった。昨年12月に日本経済研究センターは、2020年までの日本経済の平均成長率は1・2%になる、という予想を発表した。現在、災害で新しい下方リスクが生じている。それは電力の調達と価格という問題だ。 原子力発電に対する不信感が高まっており、停止中の原子力発電所は震災以降一基も操業再開が認められて