ロマンティシズムの映像文法は、対話や振る舞いの間合いに心理の説明を託します。ダイアローグで費やされる間合いの長短が、ロマンティシズムとリアリズムを分けるのです。 リアリズム文法で作られた『仁義なき戦い 頂上作戦』('74)とロマンティシズム文法で作られた『広島仁義 人質奪回作戦』('76)の小林旭を比べてみましょう。 それぞれの台詞の間を図解するとこうなります。 時間に情緒的な帰依をした『広島仁義』のロマンティシズムと比べると、『頂上作戦』のリアリズムは簡素です。しかし図表からわかるように、いちいち時間的なりソースを費やすロマンティシズムに機能的な描画は向かないでしょう。 リアリズムは、心理を説明するというロマンティシズムの動機自体を疑います。感情は記述できるものではなく、もし説明できるとしたら信憑性がない。小津は言います。泣いたり笑ったりすれば感情を伝えるのはやさしい。しかしこれでは単に