前回の記事で,大分県のケーブルテレビ(CATV)事業者が福岡県の地上デジタル放送を「区域外再送信」するために,総務省に大臣裁定を申請していることを取り上げた。その結果は7月にも出るとみられていたが,8月に延期になった。「参議院選挙の行方を見てから決めたいのだろう」という声が,業界内から聞こえてくる。今回は,これまでの例を紹介しながら、この大臣裁定の本質について改めて考えてみたい。 有線テレビジョン放送法(有テレ法)第13条3項の規定にあるように,CATV事業者と地上波放送事業者による再送信同意の交渉が合意に至らなかった場合,もしくは地上波放送事業者が交渉のテーブルにつかなかった場合,CATV事業者は総務大臣に対して裁定を申請できる。この裁定については有識者から,「同意しない場合の条件を地上波放送事業者に対して厳しく課すことで,CATV事業者が裁定を申請すれば,ほぼ同意が得られるような構造が