著: 本人 「西荻には住みたくなかった」 前妻との離婚をめぐるメールに刻まれた強烈なパンチライン。秋の夜長、暗いマンションの一室でそれを読んだ私は、絶望しつつも声を出さねば折れると思い「……そうだったかー」と発した。2012年のことだ。 おかえりなさい独り身の世界 西荻窪に初めて降りたのは18歳のころ、2000年にさかのぼる。通学や夜遊びの便から新宿まで電車一本で、かつ「都心」と胸を張れそうな23区内でと絞り込み、武蔵野市の手前である杉並区の端・西荻窪に来た途端「ここだ」と惚れてしまった。広大な田園が自慢の地元からコンクリートロード東京へ移った身には、文化的な雰囲気と垢抜けなさの同居した西荻窪の街並みから漂う奥深さと親しみやすさが妙に魅力的だったのだ。 西荻窪駅北口。中央のシンボリックな木は年末に雑なイルミネーションが施され、毎年ちょっとウケていた。駅を出た真正面にカラオケ店や飲食店が並ぶ