大塚英志『物語消滅論』(ISBN:4047041793)読了。三部構成だけれど、第3章は各論ないし応用編。主たる部分は、副題にもある《物語》を扱う第1章と、近代の登場が生んだ《私》の位置づけを論じている第2章。 第1章では、工業化されうる《物語》の制作において、「作者」はブルーカラー労働者であると説く。すなわち、セオリー(手順)さえ踏めば自動的に物語を生成できるようになった時代では、作者は「アプリケーション」に過ぎないというのだ。このあたりの着眼点が、原作者が本業であると自称する大塚ならでは。 ここで大塚が述べている「誰でも作者になれる」ということについては、自覚的に行われた実例を挙げることができる。一昔前に話題となった同人誌で、『詩織』というもの。あいざわひろし氏によって漫画化されている*1。初代ときめきメモリアルのエロパロなのだが、原作者の岩崎啓眞(いわさきひろまさ)氏は、1994年に