カナダの北西部太平洋沿岸のブリティッシュ・コロンビアの先住民にハイダ(アイダ)と名のるヒトたちがいる。「日本にいる相田さんはみなわしらの兄弟さ」という冗談とも本気ともつかないことを、彼らに昔いわれたことがある。姿格好はとにかくわれわれととてもよく似ていた。このハイダの国に、鮭とわたしたちの関係を知る上で重要な言い伝えが残されている。ハイダのヒトたちだけでなく、北西太平洋沿岸のヒトたちは、食べるものはことごとく海からやって来ると信じていて、当然ながら海が汚れることに警戒心を持つ人たちでもある。ハイダの国に伝わる鮭の話は、われわれがすべての生きものをなぜ敬わなくてはならないか、とりわけ食べ物にする生きものを大切にしなくてはならないかを、教えてくれている。同時に、なぜ縄文時代の鮭の骨の化石があまり残っていないかの理由もわかるだろう。 鮭の少年の物語 昔、ハイダの村に、腹をすかしているひとりの男の