お昼はじゃんぎ丼を食べてみたいですと白川さんが自分から言ってきたとき、なにか他に話したいことがあるんじゃないかという気がした。 会社の近くにある居酒屋はランチ営業をしていて、そこで出しているじゃんぎ丼は居酒屋っぽいくっきりとした味付けで、たまに食べたくなる。コロナウイルスの前はお昼時に毎日混んでいたけど、最近は並ばなくても座れる。 二人で店に入って注文して、丼が来るのを待っているあいだ、やっぱり白川さんはためらいがちに、朝会の新しいやりかたを私はどう思うか、訊いてきた。 会社では毎日、始業前に朝会がある。今月から週1回、朝会で出席者が順番に「いま感謝を感じていること」を発表することになった。これは部長の発案で、全員でポジティブな感情を共有すると、チームの「エンゲージメント」が高まるらしい。 「自分の番が来る前に、なんか感謝していることを、探して思い出しておかなきゃいけないってことですよね」