中学校の卒業式はあいにくの雨だった。 保護者は校庭に車を止める段取りとなっていたので、先生の指示に従って車を止めた。車のドアをあけ一歩踏み出しただけでヒールが埋まる感覚があった。体育館までそう遠くはない距離であったが、一歩一歩が物理的に重たかった。靴は砂だらけでスーツも少し濡れていた。 入口で受付をすませる。式次第と集金の残金、そして「生徒からの感謝の手紙になります」とあまりキレイとは言えない息子の字で私の名が書かれた封筒を受け取った。 体育館までの廊下を歩く。何名かの在校生が「おめでとうございます」と声をかけてくれた。このところ暖かい日も続いていたが寒の戻りか今日はとても冷えていた。まだ席は半分以上空いていたので好きなところに座って本を読んだ。母親の集団の声、夫婦で出席される人たちの声、あらゆる音を聞きながら本を読んでいた。しばらくすると合唱部と思われる子達10名ほどが歌を歌い始めた。お