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この本については、既に亀山郁夫氏が『文学界』8月号で取り上げている。本書の稀有の魅力と美点については、亀山氏の意見にほぼ同意できる。その点をここでは繰り返すことは避けて、むしろいくつかの批判的考察を付け加えたい。 ここで強調しなければならないのは、我々の批判は、佐藤氏の本の魅力と力を構成する点と不可分であるということである。 亀山氏は、旧ソ連の様々に異なる立場の人々が、佐藤氏に対して次々に胸襟を開き、貴重な情報を与えるのに驚嘆しながら、「それは、何と言っても、自己保身を求めないまっとうな政治家の前では、人並み以上に膝をおる誠実さが「マサル」自身に備わっていたからだ。まさに「人間力」。」と述べている。 私には、この点は「人間力」だけでは説明がつかないように思われる。むしろ、氏の神学的素養が問題なのではないだろうか?モスクワで、氏が反体制派や異端派の知識人群に迎え入れられるきっかけが、モスクワ
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