ばたばたしていて、昼休みに入るのが三十分遅れた……のはいいのだが、休憩室のドアを開けて、しまったと思った。先輩のA子さんがまた「オッサン、オッサン」と連呼している。 オッサンとは彼女の夫のこと。彼がいかに不快でストレスを与えてくる存在であるかを、A子さんはお弁当を食べながらしょっちゅうみなに話して聞かせるのだ。 ひそかに「ジャイアンリサイタル」と呼ばれているそれが始まると、私は「歯磨きしてこようっと」「記録ができてないからお先に」などと言って仕事に戻ることにしている。でも、今日はそれができない。 自分で言うのもなんだが、私は人の話を聴くほうだと思う。 興味のない話だと上の空なのが見て取れる人がいるが、もちろんそんなことはしない。自慢話やのろけ話でも「マウント取ってんの?」なんて思わず、ちゃんと相槌を打つ。 しかしながら、パートナーの悪口だけは別。 「あなたにとってはデトックスなんだろうけど