渋谷東急ハンズ前のルノアールの窓際の席に座って、私は通りを見下ろしている。正方形の硬質なテーブルの上に乗ったコーヒーカップの中のコーヒーはとうに冷めており、私はそれを一口すすってみるが、もはやそれは飲み物ではない。苦みだけが舌に残る。 私の前にはいわゆるゴシック・ロリータ・ファッションの中年女が座っている。その肌の毛穴は荒く、開いており、その上に塗った化粧で隠してはいるが、手の甲に浮き出た静脈瘤の痕跡が、女の実際の年を表してしまっている。女の目は斜視で、右目がどこを見ているかわからない。 芸能人だったら誰に似てると思う? 私いつもかわいいって言われるのよ、と女が日本語で言って、私は同じく日本語でへーそうなんだ、でも僕は芸能人詳しくないんだ、と答えて外を見る。下の通りにはアメリカ人らしき集団が、大声で笑いながら道を歩いていくのが見える。小柄な人々がそれをよけて歩いていく。 女が、ねえ、と手の