→紀伊國屋ウェブストアで購入 「和歌と演技」 〝和歌語り〟は一つのジャンルである。呼吸がちょうどいいのだろう、ふと和歌をのぞいて賞味しては、「ふむ」と一呼吸置いてからおもむろに地の文に戻るという流れが、ある種の読書にぴたりとはまる。ぐんぐん、ずいずい読むのではない。ぱらぱら、はらはら読む。岩波新書だけをとっても、斎藤茂吉の『万葉秀歌』(上下)や大岡信の『折々のうた』シリーズなど短詩型に焦点をあてたものが定番となってきたのは、そうした収まりの良さと関係あるのだろう。 和歌語りの典型的なパターンは、濃密な「情」をたたえた和歌を、ちょっと距離をおいた評者が「知」のことばで受け止めるという形である。だから、さまざまな秀歌をあっちこっち覗きながらも、どことなく涼しい顔というか、退屈げでさえあるような、どこ吹く風という空気がある。そして、そんな緩い空気の中に、ときおり射貫くような、あるいはひねりや毒を