前回(id:Delete_All:20100826#1282797394) のつづき。行方不明になっていた上司が出社した。入院を理由に休み続け、病院名も教えず診断書も出さなかった部長だ。休んだ理由だけは覚えていたらしく、出社するなり、誰もきいていないのに右の脇腹を右手で押さえながら「傷口ンが…体力ンがまだン回復ンしてンねえ」と仏語調に呟いた部長の頭髪は、最前部こそ、油と皮脂で固めて巨大ダムを想わせる黒い壁を築き、その逞しさたるや、部長健在を誇示するかの如くであったが、全体的にはバーコードと呼ぶにはたいへんに心許なく、ダムに沈む過疎村の上空をまばらに走る送電線のように寂しげで、周囲に「老いられたな…部長…」と思わせた。 部長は菓子折りを小脇に抱え、「迷惑をかけたな…お菓子のホームラン王ナボナを持参して社長に報告に行かねば…」といってから社長室へ向かっていった。声が小さく弱々しいのが、すこしだ