バスに乗ってまわると、京都はいいよ。 友人にそう教えてもらったことがある。歩くには広すぎる。地下鉄では、景色も見えないし、寄り道もしにくい。タクシーでは、お財布具合もあるけれど、運転手さんに気を遣ってしまうしね。バスだと、勝手に動いてくれる割には、自由でしょう? 友人はそんなことを言っていたが、本数も多い京都の市バスは確かに便利だ。そんな背景もあるのか、本書の案内人、鷲田先生(なんとなく、先生と呼ぶのがしっくりとくる)は、206番のバスに私たちを乗せる。 京都駅から、七条通を東進、東大路を祗園へ、岡崎、百万遍を通り、高野を経て北山通を、下鴨、紫野へと西に進み、千本通を下がり、大宮通へ、そして島原や西本願寺を越えたところで再び駅へ、とぐるり京都の街の中心部を東回りで周回するバス。地区ごとにブーッと押してバスを降り、ああだこうだとおっしゃるエッセイの体裁なのである。 京都を案内する本は数多い。
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