「日本語はおもしろい」「日本語は難しい」などの言説を聞き飽きて久しい。僕が普段いるお笑いの界隈(かいわい)でも、「言葉遊び」を軸にしたネタは、かつてほど流行(はや)っていない。偉大な先人らによって、あらかたやり尽くされてしまったのだ。個人的に「日本語を面白がること」の賞味期限は切れかかっていた。そして、本書はどうやらその文脈の本である。正直、食傷気味だと思った。 しかし、ぱらぱらと読んですぐ降参した。グエーと変な声が出た。類書と比して、具体例が多すぎるのだ。なるほど、そう来たか。そういう差別化があり得たのか。 本書では「この先生きのこるには」「冷房を上げてください」「頭が赤い魚を食べる猫」「シャーク関口ギターソロ教室」など、あいまいさを含む表現が大量に取り上げられ、一つ一つが文法的な説明によって解き明かされていく。それもテンポが速い。新書というより問題集のようなテンポである。なんなら章末に