お見合いで紹介してもらった相手は35歳で童貞だった。 風俗も経験がなく完全な童貞だという。 本人がそう言った。 ああやっぱりそうかという気持ちもあり同時に反射的に「きもい」と拒否感を覚えてしまった私は最低だろうか。 形式とか属性とかで他人を評価することは私が最も嫌うところであるが、 35年間どの女性にも一瞬でも愛されたことがない、 恐らく嫌悪されていたのであろう彼のこれまでの人生がとどめる術もなく想起されると、 同情と軽侮を禁じ得なかった。 誰か一人にでも愛されるための努力を放棄してきた怠慢さ、 努力したとしても叶えられなかったのだとすれば、 遺伝子を継承するという生物として最も基本的な権利を創造主から剥奪され自然界から見放された「非生物」であることの証左、 実力に不相応なプライドを口実として商業的に体験するための金を稼ぐ努力すらも惜しむ怠惰さ、 そしてその怠慢さ或いは非生物性を帳消しにす