いままで気づかなかった音に気づくときがある。古本屋になってはじめて、郵便屋さんのカブの「ドッドッドッ」というエンジン音が他のどのカブともバイクとも違うことに気づいた。サラリーマン時代には思いもよらなかった。そう、展覧会に参加させてもらうようになり、目録注文の葉書を待つ身になってはじめて、その音の違いを知るようになる。夕方四時過ぎ、下北沢の路地の奥から響く赤いカブのエンジン音に気づいたぼくは、届けられる数枚の葉書や、ときに組合の請求書だけだったり或は素通りする郵便屋さんに、一喜一憂する日々。それが展覧会の会期前の日常。先週、赤いカブを待ちながら、ヤニと埃でまっくろの本たちと格闘する日々を経て、2日間の会期を終え、目録品の発送作業に一日を費やし、さあ来月の遊古会の目録にとりかかるぞ… ちょっとその前にと楽しんだのは、月の輪さんから貰った昭和59年発行の中央線支部報である。これが実に面白い、一冊