研究への予算配分の話が出るたびに、日本でやらなくとも各国の成果が論文として公開されるのだから、それを読めばいいじゃないか、日本は基礎研究に金など出さなくていいのだ、という意見をよく目にする。私は自分の体験から、そうは思えない。 大学院生だった頃、ICPC(国際大学対抗プログラミングコンテスト)の代表選手たちが国外に向かうとき、コーチとして付いていったことがある。暇な時間には他の大学のコーチたち(多くは、計算機科学を受け持つ教授であり、院生は珍しかった)と話していたのだが、ある国の国立大学の講師の人との会話が軽く衝撃だった。 彼女はcomputer scienceのlecturerと名乗った。学生たちのコーチを務めるには数日の間選手に同行せねばならず、まぁ非常勤講師ということはあるまい。セオリー通り、私はこう切り出した。「何の研究をされてるんですか?」「? ああ、Oracleを教えてるのよ」