少年の世界は「暴力」が支配している。過言ではない。大人の男は程度の差はあれ、経験しているはずなのだが、忘れてしまう。たぶん、記憶にとどめたくない経験なのだろう。忘れたがっている。自分はそんなことはなかったという方もいるか。それは運が良かっただけなのだ ▼川崎市の中学一年生の上村遼太君が殺された。上村君が付き合いをやめたがっていたグループの少年三人が逮捕された。事実解明を待たねばならないが、首を刺された揚げ句、寒空に衣服を脱がされ放置されたという新聞記事の文字が目に、胸に突き刺さる ▼現場となった河川敷。被害者とは縁もゆかりもない方も足を運んでいる。大人として救えなかったことが申し訳なく、苦しいのであろう ▼暴力があふれる少年期に、運の悪い子は餌食にされ、孤独な戦いを強いられる。誰にも相談できない。報復も怖い。勇気とは自分で解決することと勘違いもする。親や友人も心配させたくない。優しい子ほど