ジン: 言うなよ。そうだ、黙っていろ 薄暗い町田のビルの一室で、 古びたテレビにかじり付く1人の青年がいます。 壁紙は、所々剥げ落ち、 年老いた者の肌のように、天井には所々、シミやヒビが見えています。 事務室と書かれたドアの向こうからは、 時折、ドッという怒声のようなものが聞こえてきます。 2012年8月。 開かれた臨時国会のテレビ中継にかじり付く若者達の姿。 廃棄寸前の町田のオフィスビルの一区画に、 簡単なパイプ机やパイプ椅子が置かれ、 1台のテレビを折り重なるように、睨みつけています。 青年A: いつ、借金の返済額の減免の法案は出されるんだ 青年B: 最初に出されてもいいのにな。まさか提出されないはずはないだろっ 青年C: 信じられるか。議員なんてな そんな怒声にも似た若者達の声を横に、 涼しい顔をした、これも若者が1人、 さっきの事務室と書かれたドアを一定のリズムでノックしています。