彗星の如く現われて、挿絵界に旋風を巻き起こした新進気鋭の挿絵画家−それが小林秀恒(1908〜42)です。 昭和9年、菊池寛の新聞小説「貞操問答」の挿絵で一躍注目を浴びた秀恒は、明るくフレッシュな画風で、あっという間に人気挿絵画家の地位を獲得しました。濃く長いまつげに、憂いを含んだ甘い瞳の美人画は多くの読者に愛され、昭和10年代には、岩田専太郎、志村立美とともに「挿絵界の三羽烏」と称されて絶大な人気を博しました。 しかし、希望に燃えた若き命は病によって徐々に蝕まれ、昭和17年、わずか10年にも満たない挿絵生活にピリオドを打ち、34歳の短い生涯を終えました。本展は秀恒の死から67年、初めての回顧展となります。挿絵原画・掲載雑誌・自画像・写真・遺愛品・その他資料を公開いたします。最期の瞬間まで明日への希望を持ち続け「挿絵を描きたい」と熱望した秀恒。挿絵画家として全力で生き抜いた、命の軌跡をご